溶血性尿毒症症候群(HUS)とβ2ミクログロブリン

最終確認日:2017/07/29 最終更新日:2017/07/29

コウメイ:「溶血性尿毒症症候群(HUS)でなぜβ2ミクログロブリンが増えるのですか?」との質問が多いので解説していきます。まずは問題を見てみましょう。

第91回医師国家試験F25

3歳の女児。5日前から1日5、6回の下痢があり、近医で治療を受けていた。今朝から下痢便に血が混じるようになった。昨夕から尿量が減り、今朝1回赤褐色の尿が少量でた。元気がなく顔色不良となってきたため来院した。

体温37.6℃。血圧132/88mmHg。意識は清明。顔面蒼白で眼瞼結膜は貧血状である。肝、脾は触知しない。赤血球240万、Hb7.2g/dL、白血球10,200、血小板6万、尿素窒素46mg/dL、クレアチニン3.0mg/dL。末梢血May-Giemsa染色標本を示す。

破砕赤血球(HUS)

この患児で予想される検査所見はどれか。3つ選べ。

  1. 高LDH血症
  2. 網赤血球数増加
  3. 直接Coombs試験要請
  4. 血清ハプトグロビン高値
  5. 尿中β2ミクログロブリン高値

正解:a、b、e

 

HUSで下痢や血便?

コウメイ:この問題がなぜHUSなのか、なぜHUSではLDHと網赤血球数が増加するのかを説明するとかなり長くなりますので今回は割愛させてください。

なぜ下痢や血便が起こるかはHUSを理解する上で大事ですので説明していきます。HUSではなぜ下痢や血便が起こるのでしょうか?

 

学生B:腸が悪いんですよ、腸が!!そんなのも知らないんですか?

 

コウメイ:だから、なぜ腸が悪くなるかを聞いています。

 

学生B:食べ過ぎや飲み過ぎですかね。

 

コウメイ:3歳の女児ですよ、飲み過ぎって・・。

 

腸管出血性大腸菌 | 志賀毒素(ベロ毒素)

HUSの原因は腸管出血性大腸菌です。特にO-157が有名ですね。

腸管出血性大腸菌(o-157)

 

腸管出血性大腸菌は志賀毒素(ベロ毒素)を産生するのですが、この毒素が細胞を傷害するので様々な症状

  • 下痢、血便
  • 溶血
  • 血小板減少
  • 急性腎傷害
  • 意識障害

を引き起こすのです。

 

学生B:食べ過ぎ、飲み過ぎが原因じゃなかったのか・・。

 

HUSと腎傷害

HUSでは腎傷害が起こります。腎傷害と言っても色々ありますが、HUSでは近位尿細管の機能が悪くなることが知られています。β2ミクログロブリンは近位尿細管で再吸収されますので、ここが傷害されると再吸収が行われないため尿中β2ミクログロブリンが増えるというわけです。

 

β2ミクログロブリンの単位はmg/L

学生B:近位尿細管で再吸収が行われないのは分かりました。でも、HUSではGFRも下がりますよね。ということは、そもそも近位尿細管へ尿がいかないのでβ2ミクログロブリンは減ると思います。

 

コウメイ:いい質問ですね。同じように考えているが結構いるのではないでしょうか。ここで重要なのは単位です。

 

学生B:単位ですか?確かmg/Lだったような。

 

コウメイ:正解です。この単位を見て何か気づきませんか?

 

学生B:濃度です。

 

コウメイ:その通りです。濃度です。絶対量ではなく濃度というのがポイントです。HUSでは学生B君が言った通り、GFRが減るので近位尿細管へいく尿の量は少なくなります。ただし、濃度は変わりません。特に濃度が変わる原因は思い浮かばないですよね。

そして、HUSでは近位尿細管でβ2ミクログロブリンが再吸収できないので、普段より濃い濃度のβ2ミクログロブリンが遠位尿細管、集合管、・・・と流れ、最終的に排尿されます。

検査ではβ2ミクログロブリンの絶対量を調べているわけではなく濃度を調べますので、「尿中β2ミクログロブリンは高値」という表現になります。今回の講義は終わりです。お疲れ様でした(^_^)