溶血で血清鉄とフェリチンはどうなるのか? 〜溶血性貧血、発作性夜間血色素尿症〜

コウメイ(@kokusigokaku):溶血の問題で納得がいかないとの質問をいただきました。まずは問題をみてみましょう。

第94回医師国家試験A55(改編)

※私が改編したのではなく問題集にこの通りの記載がありました。

溶血を示す検査所見はどれか。3つ選べ。

  1. 尿ビリルビン陽性
  2. 尿ヘモジデリン陽性
  3. 網赤血球増加
  4. 血清ハプトグロビン減少
  5. 血清鉄減少

答え:b、c、d

問題集の解説:鉄、フェリチンは赤血球の中の濃度の方が高いため、溶血すると高値となる。

 

第105回医師国家試験D9

発作性夜間血色素尿症でみられるのはどれか。

  1. 血清銅低下
  2. 環状鉄芽球増加
  3. VitB12低下
  4. 血清フェリチン低下
  5. 赤血球浸透圧抵抗性減弱

答え:d

解説:慢性の血管内溶血によって鉄欠乏を引き起こしフェリチンは低下する。

 

読者からの質問

94A55では溶血で血清鉄は減少すると説明してあります。それなら、溶血を起こす発作性夜間血色素尿症でも血清鉄が上昇して、フェリチンは低下しなさそうです。しかし、105D9では鉄欠乏で血清フェリチン低下とあります。どう考えれば良いのでしょうか?

 

溶血した直後に血清鉄は高くなるのか?

少なくとも「血清鉄減少が溶血を示す所見」でないことは確かですが、溶血した後で血清鉄が上昇するかはあまり経験がないのでよく分かりません。

そもそも、血液検査の「血清鉄」って何を測定しているのでしょうか。血液中の鉄は、

  • トランスフェリンと結合した鉄
  • 赤血球内のHb
  • フェリチン

などがあります。私(多くの医師)は検査の測定原理について専門でないので、詳しくは分かりませんが、検査機関のウェブサイトを見ると主にトランスフェリンと結合した鉄を測定しているようです。

もし溶血した際に血液中に遊離されたHbやハプトグロビンと結合したHbまで血清鉄として測定されれば、溶血後の血清鉄は上昇するでしょうし、測定されなければ溶血後の血清鉄は不変でしょう。

溶血してしばらく経った後で血清鉄とフェリチンはどうなるのか?

溶血してしばらく経つと遊離されたHbは再利用されるか、再利用されなかった分は尿から排出されます。よって、体全体としては鉄は減ります。一般的にフェリチンは体全体としての鉄の量を反映しますのでフェリチンは低下します。ここまでは異論はないでしょう。

このときに血清鉄がどうなるかですが、溶血が落ち着いていれば低下するでしょう。溶血が続いていて、検査で遊離したHbを血清鉄と測定するなら血清鉄は上昇し、測定しなければ不変か低下となるでしょう。

ある検査機関のウェブサイトの資料によれば、溶血性貧血では血清鉄は「→↑↓」となっています。

※本来なら臨床検査法提要改訂第33版を見るのがよいのですが、持っていないので孫引きとなっています。

これを信じるのであれば、溶血し遊離したHbは血清鉄として測定され、溶血した直後は血清鉄は上昇(↑)し、少し落ち着いた後は横ばい(→)になり、最終的には体から鉄が減るのでフェリチンと伴に低下(↓)すると考えられます。

溶血性貧血と発作性夜間血色素尿症の診断基準に血清鉄は含まれない

よって、採血するタイミングで検査値が異なる(可能性が高い)というのが私の回答になります。実際に、溶血性貧血と発作性夜間血色素尿症の診断基準に血清鉄は含まれていません。

【溶血性貧血の診断基準】

溶血性貧血の診断基準

【発作性夜間血色素尿症の診断基準】

発作性夜間血色素尿症の診断基準

よって、これらの病気を診断する上で血清鉄は重要ではありません。しかもこの問題は改編されていますので、実際は違う選択肢だったのかもしれません。これ以上深入りするのは止めておくのがよいでしょう。

以上で説明は終わりです。