【眼科14】Vogt-小柳-原田病 〜漿液性網膜剥離、夕焼け状眼底〜【107I48】

※全18回です。目次はこちらです。

コウメイ:今回はVogt-小柳-原田病(原田病)について解説していきます。

原田病は白髪、難聴、頭痛、夕焼け状眼底
原田病は白髪、難聴、頭痛、夕焼け状眼底
原田病は白髪、難聴、頭痛、夕焼け状眼底

とだけ丸暗記している方はいませんか?本質を理解しましょう。その方が楽しいし、忘れにくいです。

目次

1)原田病の本質

原田病の本質はズバリ色素上皮の炎症です。

色素上皮と言って何が頭に浮かびますか?髪の毛とかは分かりやすいですよね。原田病では髪の毛の色素上皮で炎症が起こった結果白髪になります。

色素上皮は髄膜にもあります。そこで炎症が起こると頭痛が起こります。色素上皮は耳にもあります。そこで炎症が起こると難聴が起こります。

「色素上皮の炎症」という本質を理解するだけで大分覚えやすくなりましたね。

2)漿液性網膜剥離

次に眼の話をしていきましょう。眼にも色素上皮があるのですが、何のことだか分かりますか?そうです、網膜色素上皮のことです。原田病では網膜色素上皮に炎症が起こります。

眼に限らず炎症が起こると血管の透過性が亢進します。例えば、ARDSとかがそうですね。ARDSは肺の血管で炎症が起こり、血管の透過性が亢進し、液体成分が血管外の漏れ、肺水腫になる病気です。

急性膵炎なんかもそうです。膵液が血中に流れ込み、全身の血管で炎症が起こります。その結果、血液の液体成分が血管外に漏れます。

※だから急性膵炎の治療は輸液なのです。

このように、炎症が起こると、血管の透過性が亢進し、血液の液体成分が漏れます。網膜色素上皮でも同様です。ここで炎症が起こると周囲の血管の透過性が亢進し、血液の液体成分が周囲に漏れます。

もっと具体的に言うと、感覚網膜と網膜色素上皮との間に液体成分が漏れます。その結果、感覚網膜と網膜色素上皮との間がどんどん開いていきます。これを何というか覚えていますか?網膜剥離でしたね。

※「えっ、何のこと?」と思われた方はこちらをごらんください。

液体がたまることが原因なので、漿液性網膜剥離と言います。下の点線で囲った部分がそうです。周りの網膜と色が異なります。

医師国家試験107I48_画像A_原田病の眼底写真_改変(漿液性網膜剥離)
画像:医師国家試験107I48より改変

と言っても、普段眼底を見慣れていない方が眼底写真を見て「あっ、漿液性網膜剥離じゃん!!」と診断するのは難しいです。ですので、他の検査もあわせて診断しましょう。それが造影検査です。

造影剤を点滴しながら特別なカメラで眼底を撮影すると下のようになります。血管がきれいに写っていますね。これは正常です。

正常眼の眼底造影検査_参天製薬株式会社
画像:参天製薬株式会社

では、こちらはどうでしょうか?

医師国家試験107I48_画像B_原田病の蛍光眼底造影写真_改変(漿液性網膜剥離)
画像:医師国家試験107I48より改変

点線で囲んだ部分がもやもやしていますね。これは造影剤の漏れです。つまり、この部分で漿液性網膜剥離が起こっていると考えられます。このような病変を見たら原田病である可能性が高いです(少なくとも国試では原田病と診断してよいでしょう)。

3)夕焼け状眼底

再度眼底写真を見てみましょう。色はどうでしょうか?

医師国家試験107I48_画像A_原田病の眼底写真_改変(漿液性網膜剥離)
画像:医師国家試験107I48より改変

「夕焼けの色になっている!!」と思われた方は心眼で見ている可能性があります。きちんと現実の眼で見ましょう。これは夕焼けの色ではありません。つまり、夕焼け状眼底ではありません

原田病では夕焼け状眼底が見られるはずなのに、一体どうなっているのでしょうか?原田病は網膜色素上皮で炎症が起こる病気と説明しましたが、まずは血管の透過性が亢進します。その結果、漿液性網膜剥離が起こるのでした。

その後、網膜色素上皮での炎症が続くと、徐々に色素を作ることができなくなります。網膜は茶色に見えますが、それはこの色素が存在するためです。

この色素を無くなると網膜の外側にある脈絡層が透けて見えるようになります。脈絡層には豊富に血管が存在するため赤く見えます。

もうお分かりですね。これが夕焼け状眼底です。よって、ある程度時間が経たないと夕焼け状眼底にはなりません。ですので、夕焼け状眼底がないからといって原田病を否定することのないようお願いします。

ちなみに、夕焼け状眼底とは下のようなものです。

医師国家試験98A7_画像B_原田の眼底写真(夕焼け状眼底)
画像:医師国家試験98A7

以上、原田病の本質について説明しました。これを踏まえ、過去問を見てみましょう。

4)国試の過去問演習

医師国家試験107I48

24歳の女性。両眼が見えにくいことを主訴に来院した。両眼の前房に炎症細胞を認める。視力は右0.7(矯正不能)、左0.6(矯正不能)。右眼の眼底写真(A)、蛍光眼底造影写真(B)及び光干渉断層像〈OCT〉(C)を別に示す。左眼も同様の所見である。

医師国家試験107I48_画像A_原田の眼底写真
A
医師国家試験107I48_画像B_原田の蛍光眼底
B
医師国家試験107I48_画像C_原田のOCT
C

この疾患でみられないのはどれか。

a 難聴
b 眼底出血
c 感冒様症状
d 夕焼け状眼底
e 脳脊髄液細胞増多

眼底写真で漿液性網膜剥離を思わせる病変がありますが、分かりにくいのでそれほど気にしなくて大丈夫です。

医師国家試験107I48_画像A_原田病の眼底写真_改変(漿液性網膜剥離)

造影写真を見てみましょう。こちらは比較的分かりやすいですね。造影剤が漏れており、漿液性網膜剥離が考えられます。よって、原田病が考えられます。

医師国家試験107I48_画像B_原田病の蛍光眼底造影写真_改変(漿液性網膜剥離)

OCTでも感覚網膜と網膜色素上皮との間に隙間があり、網膜剥離であるのが分かります。

医師国家試験107I48_画像C_原田のOCT_改変

この疾患で見られないのは眼底出血ですが、

原田病では眼底出血は見られない
原田病では眼底出血は見られない
原田病では眼底出血は見られない

とだけ覚えても意味がありません。それ以外の選択肢(症状)もきちんと確認しましょう。前述したように、耳にも色素上皮があるのでそこで炎症が起これば難聴になります。

髄膜の色素上皮で炎症が起これば頭痛が起こります。感冒様症状と表現してもいいかもしれません。検査をすれば脳脊髄液細胞増加が見られるでしょう。前述したように炎症がある程度の期間続けば夕焼け状眼底になります。

以上で原田病の説明は終わりです。次回はウイルス感染症について勉強していきます。

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